本年度テーマ

-時間, 空間, 転換。-

2025年度の『景観開花。』では、土木施設・構造物の用途転用、すなわち「コンバージョン土木」による、都市や地域との関係性の向上や再構築をめざす空間デザインの提案をテーマとする。

近代土木の歴史に思いを巡らせると、社会基盤としての土木施設がしだいに人々の記憶や風景の一部となり、社会の成熟とともに異なる意味や価値を帯び始めたことに気付かされる。
土木施設は、機能の実装にとどまらない文化的資産としての意義を有するようになってきたのだ。

土木設計家・篠原修は自著の中で、土木デザインとは「文明を大地の上に造形化して美しい風景を形成し、文化遺産として後世に残す行為」であると位置づける。土木空間は、文明が生んだ技術や制度、価値観とともに変化し続けながらも、そこに蓄積された時間の層を内包し、風景として私たちの前に立ち現れる。その意味で、土木施設がもつ都市景観上の役割や市民の誇り・愛着といったレガシーは、今後の地域社会における重要な文化的価値となるであろう。

こうした観点に立つと、近年増えつつある老朽化したインフラや、時代の変化とともにその役目を終えた施設・構造物を再利用・再生利用することは、空間の継承と再生の両側面から大きな意義をもつと言える。
そこで、本年度の『景観開花。』では「コンバージョン(conversion)」という考えに着目する。コンバージョンとは一般に「転換」を意味し、特に建築の分野では、当初の構造を活かしつつ内部の用途を変更することで、全く異なる機能を持たせる手法として定着している。近年では、空き家がカフェへ、廃校が宿泊施設へ、工場が市役所へ生まれ変わるといった事例が各地で見られる。

一方、土木の領域におけるコンバージョンの実践は普及するまでには至っておらず、裏を返せば多くの可能性を秘めている。既存ストックを活用することは、都市の持続性や環境負荷低減の観点からも重要なアプローチであり、今後の土木デザインにおける重要なテーマの一つと言えよう。

構造的に高度な技術が用いられてきた土木施設や構造物が、役割を終えたあとにどのようなかたちで都市や地域と関係を結び直していけるか——そのデザインには、単なる用途転用にとどまらない創造的な提案が求められる。
土木がつくり出した時間や文化の広がりが、新たな役割を伴ってまちと繋がる「コンバージョン土木」のデザインを期待している。

評価の観点

 評価は以下の観点をもとに総合的に判断する。

  • 提案がテーマに即しているか
  • 対象とする施設・構造物と都市の歴史をよく理解しているか
  • 持続可能な都市・地域社会に寄与する空間であるか
  • 用途転換後の活動や利活用、周辺地域との関係性に関する具体的な提案がなされているか
  • 独創性・将来性・現実性に富むものであるか

設計条件

作品は以下の設計条件を満たすこととする。

  • 土木施設あるいは土木構造物を中心とした、ハードに主眼を置いた提案であること。
  • テーマに沿う施設・構造物と都市を対象として選定し、選定理由と合わせて明示すること。対象とする施設・構造物の規模は問わないが、単なる改修ではなく、用途や機能の転換を伴う「コンバージョン」であること。
  • 施設・構造物の補修や補強を行うことを前提としてよいが、現在(あるいは建造時)の構造そのものに大きく変更を加えるものであってはならない。
  • 原則として現行の法律を遵守すること。逸脱する場合は、その内容および理由、実現のための方策等を合わせて明示すること。

対象者

以下の条件を満たす人物・団体を応募対象者とする。

  • 2025年4月1日現在、大学・大学院・短期大学・高等専門学校・専門学校・高等学校に籍をおく学生、もしくは勤務年数5年以下の社会人であること。なお、「景観開花。」実行委員会および審査委員の関係者の参加を妨げない。
  • 上記の条件を満たす人物による団体での応募も可とする。
  • 後述する公開最終審査会に参加できること。一次審査にて入賞作品に選ばれた時点で参加を確約できない場合、その団体の入選を取り消し、次点を繰上げて入選とする。

提出物

 以下を提出物および作品提出条件とし、締切日までに(1) パネルデータ、(2) 写真データ、(3)作品概要データの3点を提出した作品のみ審査対象とする。なお、(4) 模型の作成は任意とし、一次審査を通過した作品は、最終審査時の任意での模型の持ち込みを可能とする。

(1) パネルデータ

 提案の意図を表現する図面および説明文を記載したもの。A1サイズ片面1枚に収まるよう作成し、パネルデータをPDF形式としたもの。応募者に別途案内する作品データ提出フォームからの提出を求める。

<ファイル名> 
 応募登録時に交付されるエントリーNo.をファイル名の先頭に使用し、「〇〇パネル.pdf」とすること。

例:「00パネル.pdf」

(2) 写真データ(模型写真・CG・イラスト等)

 設計の概観がわかる、模型写真やCG、イラスト等のJPEG形式のデータ。枚数は1枚以上5枚以下とする。応募者に別途案内する作品データ提出フォームからの提出を求める。

<ファイル名> 

 応募登録時に交付されるエントリーNo.をファイル名の先頭に使用し、また全枚数中の何枚目かを末尾に示し、「〇〇写真□/△枚目.jpg」とすること。

例:「00写真1/5枚目.jpg」

(3) 作品概要データ

 一次審査時に使用する100文字以内の作品の概要。応募者に別途案内する作品データ提出フォームに直接入力すること。

(4) 模型(任意)

 提案の意図をよく表現する縮尺により作成したもの。個数は問わないが、展示に要する空間は一辺が1mの立方体に収まること。最終審査へ進出した場合、模型の持ち込みを認める。持ち込み方法は以下の「作品提出」を参照すること。
なお、一次審査は公平を期すため応募者・団体名を伏せて審査を行うため、すべての提出物に氏名や所属先を記載してはならない。


作品提出

作品データ提出フォーム
応募者に別途案内する。

模型提出宛先
〒980-8572 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉468-1
東北大学災害科学国際研究所 事務局 気付
S304-E 景観研究室 景観開花。実行委員会宛

E-mail
staff@keikankaika.jp

  • 模型の提出は郵送、宅配便または直接持参による締切日必着とし、作品の提出にかかる費用はすべて応募者の負担とする。
  • 郵送または各社宅配便を利用の場合、配達時間を平日14時から18時までの間に指定し、到着日時を予め実行委員会に連絡すること。直接持参の場合も、必ず到着予定時刻を予め実行委員会に連絡しておくこと。
  • 直接持参の場合も含め、梱包は提出物が損傷しないよう厳重に行うこと。
  • 模型を分割して送付する場合、必ず組み立て方を明記すること。
  • すべての提出物には別途指定フォーマットのラベルを印刷し、必要事項を記入のうえ、梱包に貼り付けること。
  • メールの文面には、エントリーNo.、氏名、作品名を必ず記載すること。

その他

  • 応募作品は未発表のものに限る。
  • エントリーは1人につき、1エントリーに限る。
  • 応募作品の著作権は、応募者に帰属する。
  • 主催者および実行委員会は、本企画の趣旨の範囲内で、著作権者名を明示したうえで、報告書、記者発表資料、作品集、公式Webサイト等を通じて、応募者氏名、応募作品およびその内容等を公表できるものとする。
  • 設計課題に対する質問は受け付けない。規定外の問題は応募者の自由決定とする。

募集要項

本年度募集要項はこちらよりダウンロードしてください。

エントリーフォーム

以下のリンクよりエントリーフォームに進み必要事項を記入してください。

Q&A (よくあるご質問)

Q:卒業設計として制作した作品は応募しても大丈夫でしょうか。

A:規定にある「未発表」とは、

①いずれの場にも発表していないもの(卒業制作等で学内のみでの発表*を含む)を指すほか、
②過去に応募者自身がなんらかの形で発表した作品であっても、大幅な改変を加えたものであれば未発表とみなします。

*卒業制作であっても、卒業制作展等で一般に公開したものは既発表となります。