企画趣旨
『景観開花。』は、土木デザインに関心をもつ若者にその力を試す機会を提供するとともに、土木デザインの可能性を広く社会に示すことを目的とした設計競技イベントである。
戦後の成長期における日本の土木事業では、早急な社会基盤整備の要求を受けて機能性と効率性が優先され、全国各地に画一的な土木施設を生んだ。
しかし、整備の進展・拡充に伴って社会の関心や要請は量から質へと転換し、その場所が持つ意味や役割に即し、風景と調和した土木デザインの重要性が認識されるようになった。
こうした背景のもと2004年に誕生した『景観開花。』は、その時々の世相や土木における理想を反映したテーマを毎年設定し、「未来へつなぐ新時代の土木デザイン」や「人々が交わる『まち』とそれを支える土木構造物のあり方」などについての提案を募ってきた。
一年間の中断を挟み、2020年にリニューアルした後は、激変する社会情勢に対応したこれからの土木デザインのあり方について、ハード・ソフトの両面から提案を求めた。
21回目の開催となる2025年の『景観開花。』では、これまでの方針を踏まえつつも、近代土木の歩んできた歴史や時間軸に焦点を当てたテーマを設定する。
日本社会は今後、少子高齢化のさらなる進行やAIの台頭などを背景に、大きな変化を迎えることが予想される。
こうした未来志向の変化が加速する一方で、日本の近代土木には150年を超える歴史の積み重ねがすでに存在していることも忘れてはならない。奇しくも2025年は、21世紀最初の四半世紀が終わる節目の年でもある。
この節目を好機ととらえ、近代土木の歴史的蓄積と将来的な社会変革を見据えるとともに、現在直面している社会課題に対応する土木デザインのあり方を問い直す場としたい。
設計テーマ
CONVERSION Doboku
-時間, 空間, 転換。-
詳しくはEntry.をご覧ください。
審査方法
審査は、一次審査会をオンラインで、最終審査会を対面で開催する。
一次審査会は審査委員と「景観開花。」実行委員が出席し、非公開で実施する。事前に提出された無記名のパネルデータ・模型写真データ・作品概要を用いて審査委員5名が審査を行い、入賞作品を5点前後決定する。
最終審査会は、審査委員、協賛企業の代表者、一次審査会の入賞団体、「景観開花。」実行委員が出席し、公開で開催する(仙台を予定)。入賞団体は作品のプレゼンテーションと質疑応答を行い、この結果により審査員が最優秀賞と優秀賞を決定、それ以外の入賞作品を佳作とする。
審査日程(10/24更新)
エントリー開始 |2025年8月1日(金)
エントリー締切 |2025年10月26日(日)
提出物締切 |2025年10月27日(月)
一次審査会 |2025年11月10日(月)
最終審査会 |2025年12月6日(土)
会場
一次審査会|オンラインでのweb会議ツールを用いた遠隔開催(非公開)
最終審査会|対面開催(後日録画をYouTubeに掲載予定)
賞金等
• 賞金 |最優秀賞 20万円 ✕ 1点
優秀賞 10万円 ✕ 1点
佳作 4万円 ✕ 数点
特別賞 2万円 ✕ 数点
• 参加賞|一次審査会における審査委員からの自作品の講評
審査委員紹介

西村 浩
Hiroshi Nishimura
建築家/クリエイティブディレクター
株式会社ワークヴィジョンズ 代表取締役
株式会社 まちなか不動産 代表取締役
株式会社 リノベリング アドバイザー
景観開花。2025審査委員長

崎谷 浩一郎
Koichiro Sakitani
株式会社EAU 代表取締役

西村 祐人
Yuto Nishimura
修復建築家
株式会社デザイン・フォー・ヘリテージ(D4H) 代表取締役
合同会社 石と木 業務執行社員
一般社団法人ISHIZUE 業務執行理事

馬場 正尊
Masataka Baba
建築家
東北芸術工科大学教授
オープン・エー代表取締役
審査委員メッセージ
西村 浩先生
皆さんが生きるこれからの時代は、社会や環境、技術の変化が加速度的に進み、私た
ちの暮らす時間や空間の価値も常に揺れ動いています。
今年のテーマは、単なる建設や更新ではなく、既存の資源や場所を新たな意味に変え
る視点を問いかけています。
土木は本来、人々の生活基盤を形づくる仕事ですが、その可能性は物理的な構造にと
どまりません。
あなた自身が当事者として、自らの未来を見据え、そこに必要な時間や空間をどう編
み替えるのか。固定観念にとらわれず、若い感性と柔らかな発想で、既存の枠を超え
る提案を期待します。
この場は挑戦の場であり、未来の実験場でもあります。皆さんの思い切った「転換」
の物語に出会えることを、心から楽しみにしています。
崎谷 浩一郎先生
ある土木構造物がその役割を変えるとき、
求められる機能や性能の外側に何を見出すことができるだろう。
空間や地域を取り巻く「変化」に目を凝らし、
対象を捉え、見立てる力を楽しみにしています。
西村 祐人先生
既存建造物を活かす取り組みには、文化的価値を保存し未来へと手渡すという理念的な動機と、既存ストックを活かす=すなわち「まだ使える」という素朴で実利的な動機が存在します。本来、その間にはグラデーショナルで多様な選択肢が存在するはずですが、現実には、それらの取り組みは理念と実利の二極に偏り、文化遺産の枠組みの受容性の低さも相まって、私たちの暮らしの風景に大きな時間的断絶を生んでいます。再生や用途転換の事例がいまだ少ない土木の領域においては、内部空間の有無、機能や公共性への態度といった建築との差異に目を向けることも大切ですが、近代国家が土木構造物に託してきた価値観そのものに問いを立てなおす挑戦があってもよいかもしれません。既成の価値を転換(コンバージョン)する創造的な提案と出会えることを楽しみにしています。
馬場 正尊先生
リノベーションやコンバージョンの動きが土木の世界にも到来したようだ。
建築と違うのは、その巨大さや、存在時間の長さではないだろうか。
人間も自然の一部だとすれば、それがつくった構造物もまた、長い時間の中では自然へと還元されていく。
例えば、ダムや堤防は人間が作った地形のようにも見える。
ローマの水道橋を見ながら、数千年経った高速道路を妄想することもある。
大きなスケールと長い時間の中で変換の姿を追求できるのは土木の特徴なのではないか。
同時に、小さなコンバージョンが土木を変えてゆく風景を目にするし、僕も時に貢献している。
高速や鉄道の高架、道路、橋などにヒューマンスケールのデザインが介入を始めている。
ここではもはや土木と建築の境界は曖昧になっている。
時間も空間もダイナミックに横断しながら考えることを、このコンペは望んでいるのではないかと思う。
みなさんの想像力を見るのが楽しみです。
